【本の感想】好きなことを仕事にできた作家の、物語の人生|上橋菜穂子、構成・文 瀧晴巳『物語ること、生きること』

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上橋菜穂子、構成・文 瀧晴巳『物語ること、生きること』講談社文庫

『物語ること、生きること』は、国際アンデルセン賞を受賞した作家・上橋菜穂子さんの少女時代のエピソードや、文化人類学の研究、そこで得られた経験が、どのように小説の創作活動に活かされてきたかを知ることができる一冊です。

『物語ること、生きること』は、上橋さんご自身が書かれたのではなく、瀧晴巳さんのインタビューを受けて、それを瀧さんがまとめた著書です。

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瀧さんはフリーライターで、インタビューや書評を中心に活躍されてらっしゃる方です。

国際アンデルセン賞とは、1953年にIBBY(The International Board on Books for Young People国際児童図書評議会)が創設した、世界で初めての子どもの本の国際的な賞です。
実際の賞の授与は、準備期間の3年を経て1956年から開始されました。
それから、2年に一度のペースで発表されているようです。

『物語ること、生きること』は、どんな内容?

人はなぜ物語を必要とするのか。自分はなぜ物語をつむがないといられないのか。どうしたら自分だけが書くことができる物語にたどりつけるのか。『獣の総者』『精霊の守り人』を生み出した国際アンデルセン賞作家が、本の虫だった少女時代や文化人類学の研究過程など自らの人生を通じて語る、「物語」とは。

上橋菜穂子、構成・文 瀧晴巳『物語ること、生きること』講談社文庫、裏表紙より

この記事のタイトルに「物語の人生」と書きましたが、上橋さんの人生は、「物語るためにある人生」なのではないかと思いました。

子どもの頃の上橋さんは、どうやら想像力や感受性が、周りの子どもより秀でていたようで、おばあさまから聞いた色んなお話に一喜一憂し、ウルトラマンの最終話を観て吐くほど泣いたエピソードが紹介されています。

これには正直驚きました。
吐くほど泣く経験は未だにしたことないです。

ご自身で「その気になりやすい子ども」だったと評しておられましたが、そういった経験の全てが物語を書くということにつながったんじゃなかろうかと感じました。

さらに、早い段階からご自身を客観的に見ており、少女時代を振り返って、自分が「夢見る夢子さん」であることを認識し、それから抜け出したかったとおしゃっています。

「自分で何かをする実体験が浅いことを、ずっと気にしていた」という15歳の上橋さん。

例えば、高校時代の不良っぽい友達から聞いた話から、自分もそんな経験をした方が良いのではないか、と思ったり……。

良い子で幸せに育ってきた自分は、何を書いたって、どうしようもないのではないかという気持ちになったときもあるそうです。

1ミリ
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若い頃の焦燥感は、私にも覚えがあります。
わたしなんにもしてないし、なににもなれなーい! って。
……そして、1ミリに至る。

上橋さんのすごいところは、「夢見る夢子さん」から抜け出そうとして、自分で行動したこと。

夢を見ることをやめる、夢を諦めるのではなく、「自分で自分の背中を蹴っ飛ばし」、その先へ進んだのです。

そういうところが、何かをなし得るか否かの分かれ道のような気がします。

文化人類学という学問に惹かれたことも、見事に作家への道筋になっているし、全てが物語を書く糧になっていることが分かりました。

同時に、物語を書くという行為があるからこそ、上橋さんは生き続けられるのかも、なんて思いました。

毎度のことながら上手く言えませんが、「作家・上橋菜穂子」をかたちづくったものが詰まった一冊です。

巻末には、上橋さんが子どもの頃や、学生時代に読んだ本のリストが載っています。
作家となった人がどんな本を読んでこられたかが分かります。

気になる本があれば、本屋でどんどん買ってくださいっ。

1ミリ書店員の1ミリ豆知識

上橋さんが受賞された国際アンデルセン賞とは、「子どもの本が未来を拓き平和を生むというその理念から「Little Nobel(小さなノーベル賞)」」とも言われています。
この賞は、作家賞、画家賞の2部門に分かれていて、第2回までは作品に与えられていた賞です。
第3回からは、子どもの本に貢献してきた作家の全業績に贈られる賞となりました。

選考方法は、各国の支部(日本ならJBBY(日本国際児童図書評議会))が国際アンデルセン賞にふさわしい作家を推薦します。

過去に推薦された方に、谷川俊太郎さんや林明子さん、かこさとしさんなどがいらっしゃいました。

これまでに、日本人受賞者は5人。

  • 作家賞・3人(まど・みちおさん、上橋菜穂子さん、角野栄子さん)。
  • 画家賞・2人(赤羽末吉さん、安野光雅さん)。

上橋さんが作家賞を受賞したのは2014年でした。

『物語ること、生きること』は、どんな人におすすめ?

  • 将来何になりたいか、まだ分からない若人。
  • 作家になりたいと漠然と思っている人。
  • 命あることに感謝しているし、幸運だと分かっていても、生きていくことに少し疲れてしまった人。
  • なんとなく元気をもらいたい人。

今回も、最後までお読みいただきありがとうございます。

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