東曜太郎『カトリと眠れる石の街』講談社
2022年9月に発売された本書は、第62回講談社児童文学新人賞佳作に入選した「カトリとまどろむ石の海」を改題・改稿した東曜太郎氏のデビュー作です。児童文学新人賞なので、分類としては児童向けですが、大人の私が読んでも楽しい時間を過ごせました。
『カトリと眠れる石の街』はどんな内容?
作品の舞台は19世紀後半のエディンバラ。
旧市街で生活する金物屋の娘「カトリ」と、新市街のお嬢さん「リズ」が、街で密かに流行し始めた謎の「眠り病」の原因を突き止めるべく、奔走する謎解き&冒険ものです。
ここからは、内容を少しお話しします。
詳しい内容を知らないままで読みたい人は、そのまま本屋へGO。
ネットで拝見した他の方の紹介にもありましたが、この時代は、世界で最も有名なバディもの「シャーロック・ホームズ」シリーズの舞台と同時代です。
そんな時代に13歳と14歳の女の子2人が、病気にかかった身近な人を救いたいと、解決へと突き進んでいく姿は、頼もしいかぎりでした。
もちろん全てが順調に進むわけもなく、2人に好意的な大人ばかりでもありません。世間的に行動範囲などの制約の多い子どもたちだけで事件を解決できるなんて、まさに児童文学の醍醐味ではないでしょうか。
この物語の読みどころのひとつに、カトリ自身の成長が挙げられます。
金物屋の娘として、学校へ通いながら家の仕事も手伝っているカトリは、商売を営んでいる親を持つ子どもとして、当たり前のように、将来も家業を手伝い続けると言っています。
父親のジョシュが病に伏し、丁寧で勘が良いカトリの仕事ぶりを、母親のエリーも頼みにしていることが分かります。
その一方で、本を読むことが好きな娘の、その時間までも奪うわけにはいかないと思っていることも伝わり、胸が熱くなりました。
最近なみだもろいです。
このことに関して、カトリはある指摘をリズから受けるのですが、リズの言葉に対して、かすかないらだちを覚えます。
そのいらだちの原因は、このときのカトリでは分からないのですが、事件を乗り越えた後に、1つの答えを導き出します。このときのカトリの生き生きとした様子に、私もワクワクさせられました。
どんな人におすすめ?
ミステリーは好きで読むけど、何だか最近疲れて、なかなか本を読む気が起きないなと思っているあなたおすすめです。
子どもたちの混じり気のない頑張りに胸を熱くして、メンタルデトックスしませんか。
そういうわけで、東曜太郎『カトリと眠れる石の街』は、シリーズ化してくれたら続きが読みたい1ミリ書店員のおすすめでした。
最後まで読んでいただきありがとうございます。