こんにちは。
涼しくなったと思いきや、またちょっと暑くなったりして、天候に対して、煮え切らない恋人を罵るみたいな気持ちを抱いた1ミリ書店員です。
天候も恋人も、自分の思い通りになりません。
自分すらも思い通りにできていないのに、ちゃんちゃらおかしいぜ。
さて、今回は初めて韓国小説を読みました。
いつものごとく、きっかけが何だったのかは全く覚えておりません。
ソン・ウォンピョン『アーモンド』祥伝社
『アーモンド』は、どんな内容?
生まれつき扁桃体が小さく、感情の理解や表現ができない少年ユンジェが主人公です。周りの大人や同級生たちと交流する中で、ユンジュの世界・感情が少しずつ広がって深まっていくお話です。
『アーモンド』を読んだ感想
ユンジュのばあちゃんとお母さんが素敵。
事件に巻き込まれて、ばあちゃんは亡くなり、お母さんは植物状態になってしまいますが、それを淡々と受け入れ、日常を続けていくユンジュを思うと切なかったです。
周りから変な目で見られないように、ばあちゃんとお母さんが色々と手を尽くしてくれたことがあったから、今のユンジュがいると思うと、胸が熱くなりました。
同級生に変な目で見られて、「あ、失敗しちゃったのかも」とは思えるユンジュですが、それもお母さんと一緒にした努力のたまものでしょう。
苦労はあれど決して暗い未来しかない、なんてことにはならないだろうなと、感じました。
あと、シム博士も良い。
ユンジュのお母さんは古本屋を経営していたのですが、その建物の二階にあるパン屋さん。
お母さんは、自分に何かあったときに、シム博士にユンジュのことを見て欲しいと頼んでおいたのです。
シム博士にも、心に抱えたものがありますが、ユンジュに真摯に向き合ってくれています。
いい人だな、シム博士。
ユンジュは学校で、転校してきた乱暴者の同級生のゴニと出会いますが、ユンジュと正反対の激情型な性格で、最初はユンジュに暴力を働きますが、感情がないと言われるユンジュに興味を持ち近づいてきます。
ゴニの生い立ちも特殊ですが、「THE思春期」みたいなこじれた性格に、「おいおい」と思っちゃいました。
ゴニに絡んで、ユンジュは大変な目に遭いますが、ユンジュはゴニのことを友達だと、はっきり言いきっているシーンは、ぐっときました。
感情がないと言われたユンジュだからこその、余計な感情や打算などには引っ張られない、純粋な思いに胸を打たれました。
著者のソン・ウォンピョンさんは、映画の演出や脚本を手がけられている方のようです。
小説は『アーモンド』が初めて。
そのためなのか、翻訳のされかたなのか、文章がとてもシンプルでそぎ落とされている感じがしました。
「感情がないユンジュの心情」というと矛盾するようですが、それがよく分かる文章でした。
とても読みやすいです。
どんな人におすすめ?
皆さんにおすすめ。
一度は読んでもらいたいお話です。
あえて言うならば、中学生くらいまでには読んでおいてほしい!
余談
韓国や中国の小説やコミックが、たくさん日本で読めるようになったなと感じます。
今までもありましたが、ここまで本屋の平台や面陳に並ぶことはなかったのではないかと思います。
ネット小説・コミックなどもあり、ネット発の紙本も今や当たり前。
ネットで人気があるなら、書籍にしても大丈夫と、つくる方も安心なのでしょうか。
にしても、多すぎない?
「人類総文筆家」時代ですね。
今回も、最後までお読みいただきありがとうございます。