フレドリック・ブラウン『さあ、気ちがいになりなさい 異色作家短編集2』星新一訳、早川書房
この本は、YouTubeで配信されていたNo7PUMPさんの本紹介の動画を観て、読んでみようと思いました。
星新一さんの訳ということで、これなら読みやすいかなと思った次第です。
フレドリック・ブラウンは、ミステリ・SFジャンルで長く活躍されていた方で、好きな人は、ホントに好きらしいです。
解説に漫画家の坂田靖子さん(代表作のひとつに『バジル氏の優雅な生活』白泉社文庫全5巻)が寄稿されていますが、偏愛ぶりがみてとれる文章でした。
「フレドリック・ブラウンの『さあ、気ちがいになりなさい』を出版します」と電話口で言われた時、私は「ウソだろーっ」と叫びそうになった。そんな事はありえないぞ……それも、幻と化していた星新一氏の名訳のままでだ!
(『さあ、気ちがいになりなさい 異色作家短編集2』解説より)
(中略)「星さんのブラウンをくれぇぇぇ」とゾンビになったファンが……
『さあ、気ちがいになりなさい』は、どんな内容?
表題作含めて12作品収録されていました。
舞台が地球以外の惑星の作品もありますが、おそらく基本的に地球が舞台だと思います。
一番最初に収録されている「みどりの星へ」が一番分かりやすかったです。
地球へ戻ることを切に願う一人の男が、緑色のものがない惑星で、緑色の自然溢れる地球に帰るために、自分が乗ってきた宇宙船以外の、不時着しているだろう宇宙船を探し続けているお話です。
読み終わった感想は、「あ、やっちゃった……」です。
個人的には「ぶっそうなやつら」が好きでした。
駅で電車を待つ男と、その町の刑務所から逃げ出した男の話。
語りの視点が、1人ずつ移り変わって、3人の視点でお話が進んでいきます。
一人目の男が、二人目の男を刑務所から逃げ出した男だと考え、二人目の男は一人目の男がそうではないかと疑い、三人目の男で解き明かされた結果、ブラボーと手をたたきました。
人間の持つ思考する能力が、上手い具合に調和して1+1=3になった感じ。
こんな感じのお話というか、これ以上に頭をひねるお話が12も収録されているんです。
表題作の「さあ、きちがいになりなさい」なんて、読んでいる途中で、こりゃ主人公は詰んだなって思ったんですよ。
今でいう転生もの的なお話なんですが、そこに精神病院がからんできて、周りの人間全てが疑わしく感じられて、何が真実か分からなくなるような物語でした。
最後は、結局そうきたか! でもこれって何エンドだ? って、頭の中でしばらくグルグルしてました。
一冊読み終わって、なんか煙に巻かれているような感覚でした。
坂田さんもおっしゃってましたが、「〝A〟だと思ったら〝A〟でした」は、意外性もなく、そのままじゃないか、となるんですが、そこからのたたみかけ、追い打ち(?)が、ただの「〝A〟だと思ったら〝A〟でした」にならないんです。
毎度同じことを書いておりますが、私の表現力じゃ伝わらないっ!
この、こねくり返したような、いたずら坊主に「へへーん、どうだー」って言われるような感じは、読んでいただければきっと分かります。
分かってほしい!
『さあ、気ちがいになりなさい』は、どんな人におすすめ?
- 誰に、どう勧めたらよいか、わかりません!
- 普通の物語に飽きた人になら、おすすめ出来るかも。
- 「なんだ……これ……」という気分が味わいたいなら、読むべきかも知れません。
余談
No7PUMPさんはSF小説がお好きな方のようで、YouTube海外SF小説を紹介している動画を拝見し、海外SFに少し興味が湧きました。
正直なところ、翻訳もの自体にそこまで愛着がなく、SF小説を読むとしても、日本の作家の本を読むだけで……。
(以前のブログでも紹介した泉和良『セドナ、鎮まりてあれかし』など)
ほかにも、たくさんのSF小説を紹介されていたのですが、そのなかでもタムシン・ミュア『ギデオン 第九王家の騎士 上・下』(月岡小穂訳、早川文庫)という作品が、ファンタジー要素が強そうなので、読んでみたいなと思いました。
新しいジャンルを開拓してみます。
今回も、最後までお読みいただきありがとうございます。