【本の感想】2人の若者を通して描かれる、暗くて黒い社会を体感せよ|月村了衛『半暮刻』

小説
Ⓒ1ミリ書店員

こんにちは。
翻訳ものの小説を読んだ後に、日本語ネイティブの本を読むと、するする読めて、毎度のことながら、自分の本読みスキルが上がったんじゃないかと勘違いする1ミリ書店員です。

その実態は、その小説が面白くて上手だから、するする読めるんです。
作家さんが素晴らしいということなんです。

今回は、翻訳ものの不条理小説のあとに読んだ、日本の社会派小説についてお話しいたします。

月村了衛『半暮刻(はんぐれどき)』双葉社

著者の月村了衛さんは、2010年に早川書房から出版された〈大河警察小説シリーズ〉『機龍警察』でデビューされました。
当時47歳で、単純に人生80年(もう今は人生100年時代)とすると折り返しを過ぎてから、小説家デビューされたということになりますね。
そして、まだまだ現役の作家さんです。

月村さんは、大学で脚本や演劇を学び、1988年に『ミスター味っこ』で脚本家デビューされていました。
その後、様々な作品の脚本制作、シリーズ構成に携わっており、なんと歌の作詞もされていたようで、活躍の幅広さに驚きを隠せませんっ。

小説家デビュー後は、作品の刊行数も多く、SF作品だけでなく、時代小説やミステリもあり、なんとも多彩・多才な作家さんですね。

印象としては、社会的な組織が関わるものが多いのでしょうか。

1ミリ
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まあ、日本で生きている以上、日本国という組織と蜜蜜(みっつみつ)ですが。

『半暮刻』は、どんな内容?

児童養護施設で育った元不良の翔太は先輩の誘いで「カタラ」という会員制バーの従業員になる。ここは言葉巧みに女性を騙し惚れさせ、金を使わせて借金まみれにしたのち、風俗に落とすことが目的の半グレが経営する店だった。〈マニュアル〉に沿って女たちを騙していく翔太に有名私大に通いながら〈学び〉のためにカタラで働く海斗が声をかける。「俺たち一緒にやらないか……」。二人の若者を通した日本社会の歪み、そして「本当の悪とは」を描く社会派小説。

(双葉社HPより)

あまり社会派といわれる作品を読まない私ですが、今回の『半暮刻』は、以前読んだ『機龍警察』と同じ作家の本なのだろうかというくらい、進み具合が違いました。
本当に面白かったです。(『機龍警察』も面白かったですよ)

1ミリ
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ページをめくるのをやめられないとは、このことか。

正直に言うと、最初の方は気分が沈みました。
それをここまで「面白い」につなげるとは……
いやはや、ジ・エンターテイナー

作品を読んだ後に、月村さんの経歴等を調べたのですが、脚本家と知って納得してしまいました。

別の脚本家の物語のつくりかたを動画で拝見したことがあるのですが、「視聴者を飽きさないために、いかに話の展開で興味を維持させることができるのか」ということを、綿密に考えているということを知りました。

小説を書くかたも、もちろんそれらのことは考えて、つくっておられると思います。
だから面白いし、1人で何冊も本が出せているのだと思います。

ただ、テレビドラマやアニメの脚本だと、全体を通しての面白味と、一話ごとの面白味の両方を考えてつくるので、それを経験しているからこそ、こんなにも面白いものを書けるんだろうなと思わずにはいられませんでした。

『半暮刻』は、読んでいて明快な部分もあるけど、もやっとした部分もあり、そして自然と、その作品の後のことを想像・考えさせられる、そんな作品でした。

『半暮刻』を読んだ感想(※内容に触れています)

翔太と海斗が働いていた〈カタラ〉は摘発され、当時の大きな事件として、社会的記録、人々の記憶に残ります。

そこで、事件後の2人の対照的な出来事を、読者(というか私)が求める形で気持ちよく納得させる話の展開に、「おもしろ―い」と単純に思いました。

翔太の苦悩と、味わった底辺。
そこからの気づきと浮上に、安堵しました。
そして、海斗の底知れぬ恐ろしさ。
海斗は頭が良く、自分の信じたものを疑わない、あらゆる意味で純粋な人。

1ミリ
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おもしろーい。

もちろん自分が被害者だったら、と想像すると怖くなりました。

そして、もし翔太の立場だったら、どう立ち直って良いか分からないような気がします。

結果的にですが、翔太の側には、カタギでもヤクザでも、理解してくれる人がいたことが、良い方向に向かっていった要因だったのだろうと思いました。
翔太の人柄ってことですかね。

その点、海斗に関しては、何も言えません。
こういう人は、きっといると思います。
幸い、私の周りにはいないと思います。
が、気づいていないだけかもしれません。

『半暮刻』どんな人におすすめ?

  • 身近にあるかもしれない、社会の闇を知っておきたい人。
  • 安心・安全なところ(読者という立場)から、怖いことを体感したい人。
  • 単純に「おもしろーい」ものを読みたい人。
  • 「人間」とは、「悪」とは何かについて、考えたい人。

余談

繰り返しになりますが、作品に出ていた「カタラ」の活動によって、騙された女性たちのことを考えると、それが自分だったらと考えるだけで、本当に怖いです。
そして、これからでも騙されそうで怖いです。
マグロ漁船に乗せられる……のか。

1ミリ
1ミリ

助けてっ。
騙されてないけど、もう助けて!

今回も、最後までお読みいただきありがとうございます。

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