若松英輔『悲しみの秘義』ナナロク社・文春文庫
『悲しみの秘義』は、いろんな人に読んでもらいたい一冊です。
なにかで『悲しみの秘義』という本を知ったのですが、それが書籍か雑誌か、ネットの記事だったのか、全く思い出せません。
さらに、なぜ読もうと思ったのかが思い出せない。
とても良い本だったので、それを私に教えてくれたものが何だったのかが、非常に気になる。
思い出したいのに、できないもどかしさに、もんもんとしています。
『悲しみの秘義』はナナロク社から発行された単行本と、文藝春秋から発行された文庫本があります。
単行本には、25のエッセイとあとがき、文庫版では、26のエッセイと文庫版のあとがき・解説も収録されています。
また、単行本と文庫本では装幀も違っています。
単行本の発売当初は、6種類のカバーに9種類の表紙だったそうです。
見てみたかったな。
ちなみに、単行本はナナロク社さんのサイトでも「SOLD OUT」でした。
そのため、単行本は図書館で借りました。
単行本に挿入されていた、色のにじみのページが印象的でした。
文庫化で、なくなってしまったページでしたが、単行本にはない写真やイラストが挿絵として入っていて、また違った印象の本になっています。
個人的には、単行本のほうが好みです。
カバーの色味が、自分の中の悲しみをより表現してくれているように感じられました。
『悲しみの秘義』を書かれた若松英輔さんは、批評家・随筆家で多くの著書を書かれています。
どんな内容?
文庫版の解説で俵万智さんもおっしゃっていましたが、大切な何かを失った暗闇の中にいる人に読んでもらいたい本です。
人生には悲しみを通じてしか開かない扉がある。宮沢賢治、須賀敦子、神谷美恵子、リルケ、プラトンー名著に記された言葉をひとつひとつ掘り下げ、著者自らが味わってきた深い悲しみの意味を探し求めた26の美しい文章。
『悲しみの秘義』文春文庫・裏表紙より
十人いれば十通りの人生があり、それは百人でも十億でも、人間が生きている限り、それぞれの人生が営まれています。
悲しいことがあったとき、どうして自分だけがこんなことになるんだと、悲観的になることもあると思います。
いずれは身に染みて、理解出来ることではありますが、誰しも同じだけその可能性があり、そのときそれを経験したのが自分なだけであって、明日はどこかの誰かが、同じ思いに沈み込むこともあると。
ただ、分かってはいても、悲しい気持ちはぬぐえない。
だからこそ、寄る辺が欲しいと思うのではないでしょうか。
そんなときに寄り添ってくれる一冊が、『悲しみの秘義』です。
それぞれのエッセイには、名著と呼ばれる本から一文が取り上げられています。
その一文と、それを読み解く若松さんの言葉と、両方が寄り添ってくれる感覚になります。
私でもすんなりと読める内容ですが、一度では読んだ気がしませんでした。
おそらく、何度も読み返して、自分の中にある想いによって、その度にひとつずつ腑に落ちてくるのだろうなと感じた本でした。
どんな人におすすめ?
- 最近、沈みがちな気持ちになりやすい人。
- 人生で何度も読み返したい本を探している人。
- 悲しい経験をして、それをまだ言葉にできない人。
今回も、最後までお読みいただきありがとうございます。