【本の感想】美しい庭園「オーブラン」のある施設で暮す少女たち。なぜ少女たちは集められたのか|深緑野分『オーブランの少女』

小説
Ⓒ1ミリ書店員

休みの日に、一日中「文豪ストレイドッグス」をシーズン1から3まで観ていた1ミリ書店員です。
ただただ観ていました。
その時間を考えると、ちょっと廃人になった気がして、自分が怖くなりました。

さて、映画もアニメもドラマも観るけど、本も読みます。

今回は、本紹介やクイズ、独自の文学賞も設けておられるYouTube番組「ほんタメ」で、MCのあかりんが紹介していた本を読んでみました。

1ミリ
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「ほんタメ」大好き。

深緑野分『オーブランの少女』東京創元社

東京創元社のミステリ・フロンティアというレーベルの一冊です。
私は、上の書影の単行本の方で読みましたが、表紙のイラストが可愛らしいですよね。
シライシユウコさんのイラストで、ミステリやSF作品の本の装幀のお仕事も多いようです。
謎めいた雰囲気を持たせるイラストに、納得です。

表題作「オーブランの少女」の他に、4作収録されています。

「豊かな描写とトリッキーな構成が高く評価された」作品が「オーブランの少女」で、第7回ミステリーズ!新人賞佳作に入選、デビューされた作家です。

『オーブランの少女』は、どんな内容?

表題作「オーブランの少女」は、オーブランの庭を管理する老姉妹の姉が殺害されるという事件から始まります。

老婦人を殺害したのは、ほぼ裸の状態の悪鬼のような姿をした老婆でした。
その老婆も警察に拘束された後、入院中に衰弱死します。

事情を知っていそうな老姉妹の妹は、老婆が亡くなる前に自害してしまい、詳しい真相は分からずじまいになります。

その事件から、3年後。

物書きの父は、娘から一冊の本を手渡されます。
娘が、あの事件の老姉妹の妹に渡されたという一冊の手記でした。
そこには、老姉妹と老婆の関係や謎、オーブランの庭とはいったいなんだったのかが、記されていました。

時代に翻弄された少女たちの悲しい結末に向かって、当時オーブランの庭がある施設に引き取られていった一人の少女の目線で語られ、解き明かされていきます。

私の印象に残ったのは、少女たちの手首に赤・黄・青・紫のリボンが巻かれていることでした。
色の区別が分からず、登場人物の少女は、容姿によって色分けされていると考えたりします。
そこが、劣等感を持つ女の子の思春期ならでの考え方だな、と胸が締め付けられる思いでした。
もちろんリボンにも理由があるので、そこはぜひ読んで楽しんでいただきたいです。

「オーブランの少女」のほかに、「仮面」「大雨とトマト」「片思い」「氷の皇国」の4編が収録されていました。
読んでいるときに全く気がつかなかったのですが、この5編は少女にまつわるお話です。
時代や国が違う背景の作品に、脱帽しました。

もちろん、どの作品にも謎が含まれています。
それは、世界が一変するようなおおがかりな謎ではありません。
針で指先を指したような感覚の謎です。
そんなの、たいしたことないって思うかもしれませんね。
でも、針で刺したら……痛いですよね。
そんな感じです。

作品に共通して感じたことは、切なさと無力感。
時代や権力、いろんなものにあらがえない部分があるというのは、やるせないですよね。

本の感想を書くようになってから気づいたのですが、私はどんな作品にも切なさとかを感じているみたいだな、と。
私の琴線って切なさ専用なんですかね。
もしくは、そういう作品をかぎ分けて読んでいるのでしょうか。
そもそも、全ての物語に入り込んでくる要素なのかもしれない。

1ミリ
1ミリ

はっ、物語の秘密に触れのかもっ?!

……なんてね。

『オーブランの少女』は、どんな人におすすめ?

  • 一冊でいろんなタイプのミステリ作品を読みたい人。
  • 女の子が出てくるお話が好きな人。
  • 一人の作家の作品をまとめて読みしたい人。

余談

前述したYouTube番組「ほんタメ」のMCは、本好きのたくみさんと女優のあかりんです。

たくみさんは理系のYouTube番組「予備校のノリで学ぶ「大学の数学・物理」」もされていて、ヨビノリたくみさんというと、知ってる方が多いようです。
本の紹介でも、テレビ番組とかに出演されていらっしゃるとか。

あかりんは、情報番組「王様のブランチ」に出演されていた方で、舞台メインで活躍されている女優さんです。
多くの作家さんとお知り合いのようで、文学賞の授賞式とかにもお呼ばれされるんだとか。

そんなお二人は、子どもの頃からものすごくたくさん本を読まれていて、しかも本の紹介が上手
私では足下にも及ばないくらい本愛(ほんあい)にあふれています。

だから、紹介されている本が読みたくなるんですよ。
ささやかな私のブログすらもチラ読みしてくれている人なら、「ほんタメ」知ってるって方は多いのではないでしょうか。
まだ観たことがないという方は、YouTubeで「ほんタメ」検索してみてください。

1ミリ
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観て損はしませんっ。

今回も、最後までお読みいただきありがとうございます。

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